補償導線 2つのグループについて

※はじめに※

2回目のブログ記載となります大阪営業部の Y です。前回のブログでは以下の通り補償導線に2つのグループがあると説明させて頂きました。

グループ1:Extension(延長型)グループ

グループ2:Compensation(補償型)グループ

今回は補償導線のこの2つのグループについてより詳しく説明していきたいと思います。参考資料として補償導線の種類が掲載された下部の表の『補償導線の種類』の項をまず参照下さい。

<表1>

※各グループ説明のその前に※

先程まず上図の表内の『補償導線の種類』を参照頂くようお願いしましたが、各補償導線の種類で何か法則性に気づかれましたでしょうか?

そうです、まず補償導線の種類記号の先頭には 必ず熱電対の種類記号  がきます。これでどの熱電対に接続する補償導線かを判別します。ここを間違えてしまうと正常な温度測定ができませんので、補償導線を選定する際の1丁目1番地はまず 熱電対と補償導線の組み合わせ(ペアリング)を合致させる(熱電対の種類記号と補償導線の種類記号の先頭を合致させる)ところから始まります。

※Extension(延長型)グループについて※

くどいようですが上部『補償導線の種類』で他の法則性に気づかれましたでしょうか?補償導線記号の熱電対種類の次に "X" が付くグループと "C"、 "CA"、"CB" が付くグループが確認して頂けると思います。これがE"X"tension(延長型)グループと"C"ompensation(補償型)グループの区別方法となります。この項ではまずExtensionグループについて説明していきたいと思います。

Extensionグループの特徴

Extensionグループの補償導線の大きな特徴としまして、導体材料を 熱電対素線と同じ材質の素線 を使用して延長しております......

えっ、同じ材料を使用して延長しているのであればExtension型の補償導線に意味あるの?熱電対線に絶縁被覆を被せてそのまま延長すればいいんじゃないの?と思われた方、鋭いです!温度計測上はそれでなんら問題ございませんし、実際そのような仕様の "被覆熱電対" という製品がございます。

ただ温度センサー熱電対内部の素線は基本的には単線(一本線)のペアとなっております。この単線は固くて折れやすく柔軟性に乏しいため曲がる箇所での配線に不向きで、且つ可動部などで使用した場合あっという間に断線してしまいます。これはExtensionグループ、Compensationグループ共通の問題です。この問題を解決するために補償導線は素線を撚る(素線を束ねて撚線にする)ことで柔軟性を出し、一般的な電線・ケーブル同様の配線が可能になります。また素線を撚って導体のサイズを太くすることで導体の物理的強度(引張強度)が確保され、大規模プラント工場などでの長距離配線(引き回し)が可能になります。

すみません、Extensionグループ独自の話しから補償導線に関する話題に逸脱してしまいました。話しを戻しまして、上部でExtensionグループの特色として熱電対の素線と補償導線の導体は材質が同じと説明させて頂きました。材料材質が同じ利点としましてCompensationグループよりも高精度で熱起電力が発生し、言い換えると誤差の少ない温度測定が可能になります。そのため上部の "表1" 内でご確認頂けるように、高精度の許容誤差 Class1が存在するのは Extensionグループのみとなります。

※Compensation(補償型)グループについて※

CompensationグループにはBC、NCのように種類が1種類のタイプ、 RCA、RCB(SCA、SCB) のように許容誤差と補償接点温度(注1)の違いによって Compensation Aタイプ(略してCA)、Compensation Bタイプ(CB)2種類あるもの、また導体の材質と補償接点温度の違いによってKCA、KCBのようにCompensation Aタイプ、Compensation Bタイプの2種類あるものが存在します。わたくし自身はなぜ補償導線の規格が両方を同じ "A"、"B" の区別にしたのか疑問ですが(特性の違いの区別が紛らわしいので)、福電ではK熱電対用補償導線のCompensationグループには種類が分かりやすいようにKCA(WX)、KCB(VX)と極力旧JIS記号を入れて表記しております(先様のご指定ございましたらVX、WXの表記は抜きます)。

注1:補償接点温度とは熱電対と補償導線を接続するポイントの温度

Compensationグループの特徴

Compensationグループの最も顕著な特徴が  熱電対素線と補償導線導体の材質が違う という点です。Compensationグループの補償導線を使用する熱電対の特徴としてB熱電対、R熱電対、S熱電対は素線にプラチナ(白金)とプラチナを主材料としたロジウムとの合金を素線に使用しております(これを貴金属熱電対といいます。下図を参照願います)。

<表2>

K熱電対も貴金属熱電対ほど素線が高価でないもののニッケルを主とした合金を使用しておりますので、大規模工場などで長距離配線となるとコストがふくらみ、工事の予算を圧迫することになります。諸事情(主にコスト面)により熱電対の素線と同材質での配線が不可能な問題(プラチナで100m 配線するなど非現実的な問題)を解決するために生み出されたのがCompensationグループの補償導線になります。

Compensationグループの補償導線は "低コスト" でありつつ、電線・ケーブルが配線できるぐらいの温度域では熱電対と酷似した熱起電力の発生を実現しました(上部 "表1" 内の許容誤差 Class2 を参照願います)。これは熱電対素線と同等の特性を持った代替金属を生み出すために、材料の選定や合金の配分調整に努力に努力を重ねた世界中の補償導線用導体の研究者の賜物だと思います。このCompensationグループの補償導線のおかげで、例えば製鉄所などでは溶解した鉄の温度をR熱電対で測定し、補償導線RCA、RCB(旧RX)を使用して低コストで温度表示器まで配線するという温度制御システムの実現が可能となりました。Compensationグループは許容誤差が Class2 のみにはなりますが、高精度の温度制御、温度管理を要求されるような使用環境でなければ十分ご利用頂ける精度の補償導線であると思います。

※おわりに※

今回補償導線の2つのグループについてブログを書かせて頂きました。少々難しい内容になりましたが皆様ご理解頂けましたでしょうか?実生活では馴染みが薄く、名前も "補償導線" と取っつきにくいうえ、用途も熱電対という工業用温度計の配線用のみ というかなり限定的な使い方をする特異なケーブルですが、世の中のインフラ設備や産業界での生産活動を縁の下で支える無くてはならない黒子のようなケーブルです。このわたくしのブログを機会に一人でも多くの方の頭の片隅に "補償導線" というケーブルの印象が残れば、補償導線メーカーの営業マンとしてこれ以上の喜びはございません。大阪営業部 Y からのブログは以上となります、ご覧頂きありがとうございました。

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